映画【スワロウテイル】私の映画人生を変えた最高の一作について語り尽くす

ヒューマンドラマ

こんにちは、haruです。

今回は1996年公開の映画「スワロウテイル」について、見どころ、感想をまとめてみました。

元々映画が好きだった私ですが、気になった新作映画などを年に20本観ないくらいの程度でした。


それが年間100本以上の映画を観るようになり、映画というコンテンツがいかに面白いものなのか発信したいがためにこのブログ開設に至ったのも、すべてはこの作品に出会ったことがきっかけです。

普段映画を観ない方でも、
きれいな風景写真が好き
フィルムカメラが好き

そんな方にはおすすめの作品です。

それでは早速、ネタバレ付きの感想とみどころや感想をご紹介していきます!

どうか、この作品がひとりでも多くの人の目に留まりますように。

作品詳細

監督・脚本:岩井俊二
公開日:1996年9月14日
上映時間:149分
製作国:日本🇯🇵
言語:日本語・中国語・英語
音楽:小林武史

受賞歴
第11回高崎映画祭 最優秀監督賞、最優秀主演女優賞(Chara)、最優秀新人女優賞(伊藤歩) 受賞
日本アカデミー賞 優秀作品賞、優秀賞(照明賞)、話題賞 受賞

歌手のCharaさんが出演されていることでも有名な本作。
他にも三上博史さん・江口洋介さんなど豪華なキャストが出演されています。

筆者個人的には、若かりし頃の渡部篤郎さんがびっくりするくらい男前なので注目して欲しいポイント!

監督は『リリィ・シュシュのすべて』『Love Letter』『リップヴァンウィンクルの花嫁』など、数々の作品を手掛けている岩井俊二さん。

どの作品も独特な世界観で構成され、ファンタジーともヒューマンドラマとも言えるその作風からコアなファンも多く存在するようですね。

架空の都市「円都」 映画「スワロウテイル」のあらすじ

昔、世界で最も”円”が強い時代があった―――。

かつてのゴールドラッシュのように、日本で稼いで祖国に帰れれば大金持ち。お金欲しさに海外から人々が一気に日本に群がり、棲み着きます。

そんな彼らを日本人は毛嫌いし、不法入国者や違法な方法で日本に滞留する人たちを《円盗-イェンタウン-》と呼び、逆に日本に夢を持ってやってくる外国人たちはこの夢で溢れた街を《円都-イェンタウン-》と呼びました。

それが本作の世界線であり、そんな時代に生きる人々のお話です。

架空の世界なのにどこか現実的で影のある世界観。その魅力に惹き込まれるワケ

初めて本作を観たときに、架空の歴史上のお話という背景設定と、フィルム映画ならではのノスタルジックな映像も相まってファンタジー要素が強い作品だと感じたのですが、観れば観るほど現実世界で起こっている問題に忠実に向き合った作品なのだと感じるようになりました。

決してハッピーエンドとは言えない結末なのに、ここまで中毒性のある作品に仕上がったのには3つのポイントがあると思っています。

今度はそのポイントについてお話していきます。

鬱々とした作品の中でも緩急をつけるための映画の序盤

本作の全体的な構成は、取り上げたテーマのせいもありますが、基本的にずっと暗いままです。
本編が始まって最初のシーン。ひとりの少女が母親の死体の身元確認をさせられているところから、この映画は始まります。

死体の周りの女性たちが泣いていることから「多分知り合いなんだろう」と察しはつくのですが、何故か知らないと言い張る。そこにいる少女も「知らない女性だ」と警官に告げて警察署を後にします。ふとそのシーンで仲間の女性のひとりから「お葬式や埋葬するのにもお金がかかるから、ごめんね」と告げられ、死んだ女性は少女の母親だったこと、貧困に苦しむ人々だということが分かります。なんとも鬱映画っぽい出だしです。

その後少女は色々あって娼婦のグリコという女性のもとに置き去りにされます。
最初は少女を売春宿に売って稼ごうとするグリコですが、良心の呵責から少女に名前を与え、共に生きることを決めます。

「あんたに妹なんていたっけ?」
「いたよ、今日からね!」
とグリコがあっけらかんと言うシーンは、暗かった映画序盤に小さく明かりが灯る雰囲気があって、お気に入りのシーンです。

心と心のぶつかり合い、それによって伝染していく希望

普段の生活の中で私達は常に心とカラダ、どちらの充実も求めています
逆に満たされていないとバランスが取れずに心か身体、もしくはどちらにも悪い変化が生じたりします。

この「名前をもらう」シーンで、かすかにですが初めてアゲハの感情表現がされたことで少女に心が宿り、ようやくこの世にアゲハという人間が誕生したように感じました。

蝶のタトゥーが入った大人の女性から芋虫の落書きをされる少女。

そして少し嬉しそうに胸元のイモムシを眺めながら自分の名前を呼んでみるアゲハ。

ここは観た人誰もが心に残る名シーンだと思います。

本作は「モノ」や「金」に人々が支配されている猥雑な世界が印象に残りますが、

ストーリーの節々で心と心のぶつかり合いがターニングポイントになって希望がどんどん伝染していき、人の行動を変えている

観終わる頃にはいつの間にか私達観客の心にもそれが伝染しています。

結末がどうであれ、その温かみを感じるからこそただ暗いだけの映画ではないのだと思うのです。

しかし、やはり一番スポットの当たっている「モノ」や「金」についても決して見せかけではなく、考えなければならない問題として着眼点を当てているのも事実です。

貧困という問題は時代によって観客に与える印象が異なるだけで、どの時代においても当たり前のように存在し、切っても切れない問題として常にあり続けると思います。

そういった目をそむけたくなる部分も隠さずに描く。
だからこそ、これはファンタジーではなく、現実に存在する問題に忠実に向き合った作品だと思うのです。

唯一無二だと感じさせるのは、”多種多様な言語での掛け合い”

舞台は日本なだけあってメインキャストとして多数の日本人が出演されていますが、それに劣らないくらい海外の方も多く出演されています。

でもだからと言ってみんなが母国語を話している訳では無いというのが、この映画のもう一つの魅力。

日本人なのにフェイホン役・三上博史さんやラン役・渡部篤郎さんは中国からの円盗役だったため、日本語は一回も話していません。

キャスト一人ひとりに与えられた役柄の言語を、本物の母国語のように使って会話しているのが本当にすごかった!

そのリアリティから、演じられていたキャストさんたちは皆さん外国語堪能な方たちばかりかと思いきや、アゲハ役・伊藤歩さんは監督である岩井俊二さんとの対談で、当時英語も中国語もまったく話せず猛特訓したと語っています。

元来映画は「邦画」や「洋画」などと呼ばれるように映画1本につきメインで使用される言語は1種類から多くて2種類前後のものが多く見られるなか、日本語と中国語、英語もと3種類もの言語が飛び交います。1度の会話の中で3言語すべてが使用されるシーンなどはまさに圧巻でした。

言語の壁をあえてそのまま映すことによって独特な世界観が生まれ、25年以上経った今でも見る人々に新たな感覚を与えてくれる映画になったと言えるのではないでしょうか

神秘的な映像美

この作品の一番の魅力だと言っても過言ではないくらい素晴らしいのが、フィルムで撮影された映像です。

日本なのにどこか日本ではなさそうな町並み、不意に映るただの風景でさえ光の加減や画角によって目を引く映像になっています。

蝶の視点をイメージして撮られたであろう後半の1シーンは何度観ても美しく、もはや言葉で表現するのが難しいです。
このシーンは中国生まれの思想家・莊子の「胡蝶の夢」の影響を大いに感じるシーンでした。

「胡蝶の夢」とは
道教の始祖の一人とも言われる莊子が綴った説話のひとつ。
夢の中で蝶となって飛んでいたところで目が醒めた莊子が、「はたして自分は蝶になる夢を見ていたのか?」それとも「本来の自分が蝶で、今見ている世界こそが自分(蝶)が見ている夢なのではないか?」というお話。

儚げで、風が吹けば消えて無くなってしまいそうなほど綺麗な映像
それと反比例して心に深く突き刺さるストーリーを突きつけてくる

私はそれが岩井監督作品の最も魅力的なポイントだと思っています。

本作の他にも、「リリィ・シュシュのすべて」や「花とアリス」などは特に映像が美しい作品でおすすめです。

「リリイ・シュシュのすべて」についての記事はこちらから↓

結局何が言いたかったの?【リリイ・シュシュのすべて】ネタバレ考察 何故ここまで残酷な映像を作らなければならなかったのか
 こんにちは。haruです。今回取り上げるのは、2001年に公開された映画「リリイ・シュシュのすべて」。「いじめ」をテーマとして取り上げた作品で、精神的にキツい残酷なシーンが多く、最初から最後まで暗くて陰鬱な雰囲気がただた...

まとめ

最期までお読みいただきありがとうございます。

映画「スワロウテイル」は岩井監督作品の中でも、心に残るせりふや映像が詰め込まれた作品になっています。
ただぼうっと綺麗な映像を観たいときなどには最適な一作だと思います。

休日することがないとき、なんだかだらだらしたいときに視聴してみてはいかがでしょうか。

それでは次回の記事で🦋

haru

コメント

  1. kei より:

    読みました。早速観てみようと思ったよ!
    ブログ更新楽しみにしてます♡頑張ってharuちゃん!

    • haru より:

      読んでくださってありがとうございます!
      長い作品なのでお時間あるときにゆっくり観てください☺
      今後も頑張ります!

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